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カスタムERPの費用の考え方:買い切り・月額・パッケージ利用の3年/5年総コスト

カスタムERPの費用は、初年度の見積もりだけでは判断できません。一括開発+年間保守、月額オールインワン、パッケージのサブスクリプションの3つの支払い方は、初期費用が大きく違いますが、3年・5年で合計すると総コストが逆転することがあります。契約終了時にデータとプログラムを持ち出せるかどうかも、将来システムを切り替えるときのコストを左右します。本記事では、3つのモデルの総コストの計算式、見積書で抜けがちな項目、ベンダーに確認すべき質問を整理し、仮の数値であることを明示した試算例で比較の仕方を示します。

執筆 JoinX 創業者兼CEO公開 約13分で読めます
カスタムERPの費用の考え方:買い切り・月額・パッケージ利用の3年/5年総コスト

この記事の要点

  • ERPの費用は初年度の見積もりではなく、3年・5年の総保有コストで比較します。初期費用が安いプランが、数年後も安いとは限りません。
  • 一括開発+年間保守の総コストは開発費に毎年の保守費とサーバー費を加えたもの、月額オールインワンは月額×月数、サブスクリプションはユーザー単価×人数×月数に導入費と拡張費を加えたものです。
  • 「開発費 ÷(月額の年間合計 − 年間保守費)」で、買い切りが月額より割安になるまでの年数を見積もれます。この年数が2つのモデルを比べる分岐点です。
  • 契約前に、プログラムの帰属、データのエクスポート形式、終了後の扱いを確認します。台湾の著作権法第12条では、委託開発のプログラムは取り決めがなければ著作財産権が開発側に帰属します。
  • JoinXは一括開発で見積もり、シンプルなERPは約45万台湾ドルから、稼働後の保守は範囲に応じて別途お見積もりします。
目次

カスタムERPの費用は、初年度だけでは判断できません。一括開発+年間保守は初期費用が高く、その後は保守費だけを支払います。月額オールインワンは初期費用が低い一方、月額が積み上がり続けます。パッケージのサブスクリプションはユーザー数で課金され、人数が増えるほど高くなります。3年・5年の支出を合計し、契約終了時にデータとプログラムを持ち出せるかを確認して初めて、どれが本当に割安かがわかります。

価格を比較する企業の多くは、計算方法がまったく異なる見積もりを受け取ります。1社は開発費、1社は月額、1社はユーザー1人あたりの月額です。本記事はどれかを推奨するものではなく、3つのモデルを同じ物差しである総保有コスト(TCO:Total Cost of Ownership)に換算します。Gartnerの定義では、TCOはシステムの取得から利用、保守までにかかる直接・間接のすべてのコストを含みます。

ERPの費用には3つの支払い方がある?何が違うのか?

ERPの費用は大きく、一括開発+年間保守、月額オールインワン、パッケージのサブスクリプションの3つに分かれます。違いは、お金を先に払うか後に払うか、誰の業務フローに合わせて設計するか、契約終了後もシステムが残るかどうかです。

比較項目一括開発+年間保守月額オールインワンパッケージのサブスクリプション(SaaS)
課金方法開発費を一括で支払い、稼働後は毎年保守費を支払う開発・サーバー・保守を含む固定の月額ユーザー数やモジュールに応じた月額または年額
初期費用高い低い低〜中(別途導入コンサルティング費)
長期の支出毎年の保守費とサーバー費のみ月額が積み上がり続ける利用料が積み上がり続け、人数が増えると増える
業務フローの柔軟性自社の業務フローに合わせて設計自社の業務フローに合わせて設計、範囲は契約によるベンダーの機能の範囲内で、通常プログラムは変更できない
プログラムの帰属契約で定める。自社に帰属させることも可能契約による。多くはベンダーに帰属ベンダーに帰属
終了後システムを使い続けられ、保守ベンダーも変更できる契約による。照会期間とデータのエクスポートを取り決める契約終了後はログインできないため、先にデータをエクスポートする
向いている企業業務フローが安定し、長期利用を予定初期費用を抑え、まず効果を確かめたい業務フローが同業と近く、ユーザー数が少ない

3つに絶対的な優劣はありません。月額オールインワンは初期のリスクをベンダーに移す代わりに、長期の月額とベンダーへの依存が生じます。一括開発は先にお金を払う代わりに、システムの所有とベンダーを変更する自由が得られます。

3年・5年の総コストはどう計算するのか?

総コスト=一時費用+年間の固定費用×年数+拡張・変更費用です。3つのモデルすべてにこの式を当てはめ、違いは各項目の金額がどこに出るかだけです。見積もりを同じ表に分解すれば、並べて比較できるようになります。

  1. 一括開発+年間保守:開発費+導入・データ移行費+(年間保守費+サーバーまたはクラウド費)×年数+拡張・改修費。
  2. 月額オールインワン:初期導入費(ある場合)+月額×12×年数+追加費用(ユーザー、拠点、モジュール)+終了時のデータエクスポートまたは移行費。
  3. パッケージのサブスクリプション:導入コンサルティング費+ユーザー単価×人数×12×年数+追加モジュール費+連携・拡張開発費。

3つのモデルすべてに、もう1項目を加える必要があります。社内で投入する人員、たとえばマスターデータの整理、受け入れ検証、研修にかかる時間です。見積書には出てきませんが、どのモデルでも避けられません。

月額と買い切りの間では、分岐点も計算できます。

回収年数=開発費 ÷(月額の年間合計 − 年間保守費)

利用期間がこの年数より短ければ月額が、長ければ一括開発が割安です。

試算例:同じ要件で、3つのモデルは5年でいくらかかるのか?

仮の数値を式に当てはめると、同じ要件でも3年目は月額が最も安く、5年目には一括開発が最も安くなることがあります。月額は積み上がり続ける一方、一括開発の開発費は一度しか払わないためです。

以下の数値はすべて仮の値で、計算方法を示すためだけのものです。JoinXやいずれのベンダーの見積もりでもありません。 ユーザー20人の企業を想定し、各モデルの条件を次のとおりとします。

想定条件一括開発+年間保守月額オールインワンパッケージのサブスクリプション
一時費用開発費 120万台湾ドル0台湾ドル導入コンサルティング 30万台湾ドル+連携 20万台湾ドル
年間の固定費用保守 15万台湾ドル+サーバー 3万台湾ドル月額 4万台湾ドル×12=48万台湾ドル1人月額 1,500台湾ドル×20人×12=36万台湾ドル
3年の総コスト174万台湾ドル144万台湾ドル158万台湾ドル
5年の総コスト210万台湾ドル240万台湾ドル230万台湾ドル

分岐点の式に当てはめると、120÷(48−18)=4年です。つまりこの想定では、利用が4年未満なら月額が、4年を超えるなら一括開発が割安になります。

この試算には、まだ3つの要素が入っていません。パッケージで対応できない業務を人手で補う工数、月額やサブスクリプションの値上げ、そしてユーザー数が増えたときの費用です。実際に比較するときは、各社の見積もりの実際の数値を同じ表に入れてください。

見積書に書かれていないのに、総コストに影響する項目は?

よく抜けるのは、データ移行、連携、拡張・改修、サーバー費、価格改定の条項です。単体では小さくても5年で合計すると大きな差になるため、項目ごとに見積書へ記載してもらいましょう。

比較するときは、ベンダーに次の質問を直接確認します。

確認する項目確認する理由
旧データの移行は見積もりに含まれるか。何年分のデータかマスターデータや取引履歴の移行は別料金になることが多い
EC、POS、会計、電子発票(電子インボイス)との連携は、1つごとにどう課金されるか連携先が多いほど費用は高くなる
稼働後の機能追加や業務フローの変更は、どう課金されるか業務ルールは必ず変わり、改修費は積み上がる
サーバーやクラウドの費用は誰が払うか。バックアップは含まれるか一括開発の見積もりではサーバー費が別記載になることが多い
月額や利用料はどのくらいの頻度で改定されるか。上限はいくらか値上げは5年の総コストを直接変える
ユーザー、拠点、モジュールが増えたとき、費用はどう計算されるかユーザー数や拠点数で課金するモデルは、成長が速いほど高くなる
最低契約期間はあるか。中途解約時に何を支払うかプランをいつでも切り替えられるかが決まる

開発の見積もりに影響する要因については、カスタムシステム開発費用の解説も参考にしてください。

データとプログラムは誰のもの?契約終了時に何を持ち出せるのか?

データは通常企業のものですが、プログラムはそうとは限りません。台湾の著作権法第12条では、取り決めがなければ委託開発のプログラムの著作財産権は開発側に帰属します。帰属、エクスポート形式、終了後の扱いは事前に契約に書き込みます。

3つのモデルでは、終了時の状況が異なります。

  • 一括開発+年間保守:契約でプログラムを自社に帰属させ、ソースコードと文書の納品を定めていれば、保守を終えてもシステムを使い続けられ、別のベンダーに保守を引き継ぐこともできます。
  • 月額オールインワン:システムは通常ベンダーの資産です。終了後も照会できるか、どのくらいの期間か、データをどの形式で返してもらうかを、すべて契約に書いておく必要があります。
  • パッケージのサブスクリプション:契約終了後はログインできなくなるため、期限前にベンダーのエクスポート機能でデータを書き出し、添付ファイルや履歴が含まれるかを確認します。

ERPには顧客や従業員などの個人データが含まれます。台湾の個人資料保護法施行細則第8条では、ベンダーに個人データの処理を委託する場合、委託関係の終了時における個人データの返還と削除を取り決めることとされています。どのモデルでも、終了時にデータをどう返すか、ベンダー側のデータをいつ削除するかを明確にしておきましょう。

契約時には、少なくとも次の4点を確認します。

  1. プログラムの著作財産権の帰属と、ソースコードを納品するかどうか。
  2. データエクスポートの形式と範囲。たとえばデータベースのバックアップかCSVか、添付ファイルや履歴を含むか。
  3. システム構成、データベース構造、デプロイ手順などの技術文書も納品されるか。
  4. 終了後の照会期間、データの返還と削除の方法。

どんな場合に、どのモデルが割安なのか?

長期利用で業務フローが競争力なら、一括開発が通常最も割安です。初期費用を抑えたい、または業務フローが未確定なら月額が柔軟です。業務フローが同業と近く人数が少なければ、サブスクリプションが最も早く稼働できます。

企業の状況割安になりやすい方法
5年以上の利用を予定し、業務フローが安定している一括開発+年間保守
初期予算が限られ、まず業務フローを検証したい月額オールインワン。ただし終了後のデータの扱いを先に取り決める
業務フローが同業と近く、ユーザー数が少ないパッケージのサブスクリプション
すでにERPがあり、足りない部分は少ないERPを残し、モジュール追加や連携で補う
ユーザー数が急速に増えているユーザー数課金のプランを避け、5年後の人数で先に試算する

パッケージとカスタムの詳しい比較は、ERPの選び方を参考にしてください。サブスクリプションのプランを比べるときは、台湾の数位発展部が運営する「台湾雲市集」にも多くのクラウドサービスが掲載されており、比較の出発点になります。

JoinXのカスタムERPはどう見積もるのか?

JoinX(哲煜科技)は一括開発で見積もり、シンプルなERPは約45万台湾ドルからです。費用はモジュール数、連携数、データ移行の範囲で決まり、稼働後の保守は範囲に応じて別途お見積もりします。

プログラムの帰属と引き継ぎの方法は、契約時に契約書へ記載します。

当社サイトで公開しているほかの価格帯も、同じ総コストの試算に組み込めます。要件整理は約10万〜30万台湾ドル、連携1か所あたり約5万〜20万台湾ドル、単一業務のモジュール追加は約50万〜100万台湾ドルです。開発では仕様駆動開発(SDD)で業務フローと例外を明文化し、テスト駆動開発(TDD)で改修のたびに既存の会計ロジックを壊さないことを確認します。この2つの文書は、将来の引き継ぎの拠り所にもなります。

実際に手がけた事例を、それぞれ一文で紹介します。

  • 欣晨快遞:運営フローに合わせて物流管理システムとドライバー用アプリを構築し、2025年から段階的に第5版まで拡張しています。詳しくは欣晨快遞の事例をご覧ください。
  • 驊曖體育:ヨガスタジオ管理システムを2020年から第9版までリリースし、稼働後もJoinXが保守を続けています。詳しくは驊曖體育の事例をご覧ください。
  • 比漾百貨:既存のERPを残し、公式サイトとECを新たに構築して、ERP、POS、鼎新(Digiwin)の会計システムと連携しました。

3つの事例の出発点と取り組みは、カスタムERPの事例にまとめています。

よくある質問

カスタムERPの費用はどのくらいか?

範囲によって異なります。JoinXのシンプルなERPは約45万台湾ドルから、単一業務のモジュール追加は約50万〜100万台湾ドル、連携1か所あたり約5万〜20万台湾ドルです。モジュールや連携が多いほど、データ移行が複雑なほど費用は高くなります。比較するときは保守費とサーバー費も含め、3年・5年の総コストで計算します。

ERPの月額と買い切りは、どちらが割安か?

利用年数によります。「開発費 ÷(月額の年間合計 − 年間保守費)」で回収年数を計算し、それより長く使うなら一括開発、短いなら月額が割安です。契約終了後にシステムとデータを残せるかどうかも、あわせて比較しましょう。

ERPの月額プランを終了したら、データは持ち出せるか?

契約によります。データは通常企業のものですが、エクスポート形式、添付ファイルや履歴を含むか、終了後どのくらい照会できるかは、契約前に明記しておく必要があります。月額プランのプログラムは多くがベンダーに帰属するため、終了後は通常、元のシステムを使い続けられません。

パッケージERPの利用料以外に、どんな費用があるか?

よくあるのは、導入コンサルティング費、データ移行費、追加モジュール費、連携・拡張開発費、そしてユーザー数が増えたときの利用料の増加です。パッケージで対応できない業務は人手で補うことになり、その人件費も総コストに含めるべきです。

委託開発したERPのプログラムは、必ず自社のものになるのか?

そうとは限りません。台湾の著作権法第12条では、他人に依頼して完成させた著作物は、取り決めがなければ著作財産権が開発側に帰属し、依頼した側は利用できるだけです。プログラムを自社に帰属させるには、契約で明確に定め、ソースコードと技術文書の納品を求める必要があります。

ERPの保守費はどう見積もればよいか?

まず、不具合の修正、サーバーとバックアップ、互換性の更新、小規模な改修の工数など、保守に何が含まれるかを書き出し、その範囲でベンダーに見積もりを依頼します。保守の範囲によって費用は大きく変わるため、比較の前に各社の見積もりが同じ項目をカバーしているか確認しましょう。

参考資料

  • Total Cost of Ownership (TCO), Gartner GlossaryGartner
  • 著作権法 第12条台湾 経済部智慧財産局
  • 個人資料保護法施行細則 第8条台湾 法務部
  • 台湾雲市集(Taiwan Cloud Market)台湾 数位発展部数位産業署

上記は執筆時点で引用した法令・資料です。改正される場合がありますので、実際の適用は所管官庁の最新の公告をご確認ください。

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著者について

李秉哲(Jack Lee)

JoinX 創業者兼CEO

2016年にJoinXを創業。台湾と日本にまたがる80名以上のチームを率い、220社以上のお客様に520件以上のプロジェクト(うち中・大規模システム56件)を提供してきました。

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